公務員宿舎について

昔から、公務員宿舎に批判はつきものです。何故、公務員は都心の立派なマンションに格安の家賃で住むことができるのか、と。確かに、世間の相場と比べれば、格段に安いのはそのとおり。しかし、もし公務員宿舎がなかったならば、辞令一枚で全国各地に飛ばされる公務員たちは、どうやって住まいを確保したらいいのでしょう? そうなれば、もちろん民間のアパートやマンションに住めばいいのでしょうが、そうなると大変手間暇がかかり、公務に若干の影響を与えるでしょう。

いずれにしても、野田総理が朝霞の宿舎建設を凍結するというのであれば、それはテレビ局を中心にしたマスコミの批判を認めたことになるのです。

しかし、はっきり言って、公務員宿舎に関心を寄せるのは、首都圏に住む人々だけであるのです。地方に行けば、別に公務員宿舎が羨ましがられることなんて全然なし。都心に公務員宿舎を建てるというのであれば、関心が集まるのも分かるのですが‥今問題になっていたのは建てる場所が朝霞です。

問題の本質は、公務員宿舎の家賃の安さにあると思うのです。もし、公務員宿舎の家賃が民間の家賃と殆ど変らない水準であるとすれば、誰が公務員宿舎を羨ましと思うでしょう。ですから、公務員宿舎の問題を考えるに当たっては、公務員宿舎の家賃の水準について先ず論じる必要があるのです。

では、公務員宿舎の家賃を上げるべきか? しかし、実はこれは案外難しい問題であるのです。というのも、例えば、民間の企業に務めるサラリーマンの場合も、会社から多額の住宅手当が支給されるケースがあるからです。それに、結局、働く側としては、住宅などのフレンジベネフィットを含めて給与水準を判断する訳ですから、もし、給与を引き下げるだけでなく、公務員住宅の家賃を引き上げることになれば、それにともない次第に優秀な学生が公務員を志望しなくなることも考えられるからです。

で、国家の判断として、それほど優秀な学生を官僚として採用する必要がないというのであれば‥つまり、政治家主導で、立派な行政が展開できるというのであれば、確かに公務員宿舎の家賃を引き上げても全然問題がない訳ですが、官僚の質が落ちることによって行政の円滑な推進に支障をきたすようであれば、それはそれで問題であるのです。

だいたい、東大をトップクラスで卒業したような人々を、初任給20万円ほどで採用すること自体が経済原理に反していると思うのです。でも、政治家は、そうやって国民の側の反応ばかりを気にするのです。

しかし、そうやって表向きの給与が低く抑えられるので、官僚の方は、公務員宿舎の安さで元を取ろうと考えたり、或いは、天下りで元を取ろうとするのです。そのようなシステムはなんと不健全でしょう。全ての官僚に高い給与を支給する必要はないにしても、中間管理職以上にはそれなりの給与を支給し、その反対に、天下りは全面禁止するような措置を取った方がいいと思うのです。


私は、公務員宿舎などない方がいいと思います。民間の人々が暮らす普通のマンションなどに入居する方がいいと思います。そうなれば、民間の人々が何を感じているのか、よく分かるように なるでしょう。ただ、そうなると、平均して2年に1度はあるとも思われる転勤への対応が困難になるでしょう。また、だからこそ、公務員宿舎を確保することが必要だとも主張されるのですが‥でも、よく考えたら、やたらめったら転勤させる現在の公務員の人事ローテーションがおかしいのです。本当にそんなに転勤をさせる必要があるのか?

何故、頻繁に転勤が行われるかといえば、毎年人事の総入れ替えみたいなことをやっているからです。
公務員宿舎の問題を表面的に捉えないで、公務員の人事制度まで遡って検討することが必要です。でも、そのための能力も知識も徳もなく、ただテレビ局は、視聴者の嫉妬心に訴えるような番組ばかり作っているのです。

国民と役人を対峙させるような構図ではなく、お互いに少しは相手の立場も考えるような公務員制度の改革が必要ではないのでしょうか?